何気なく地図を見ていると、ある半島が目に留まった。
佐田岬。
日本一細長い半島で、その先端は四国最西端の地でもある。
少し調べたところ、佐田岬からは九州行きのフェリーも出ているらしい。
手に入れたお休みは4日間。
そうだ、愛媛行こう!
電車でとことこ伊予西条へ
新大阪駅から博多行きの「のぞみ1号」に乗り込み、岡山駅に到着したのは午前9時過ぎだった。
在来線ホームに移動し、海を渡る電車に乗り換える。
海のない県に生まれた身としては、この電車が今から海の向こうの大きな島に向かうなんてやっぱり不思議に思う。
瀬戸大橋が開通し、日本列島が線路で繋がった日、四国の人たちは飛び跳ねたいような気分だったのだろうか。
その時代に居合わせたかったと、松山行きの特急しおかぜに揺られながら考えた。
2時間ほどで目的地の伊予西条駅に到着。
自転車を組み立て、いざ出発!
穏やかな海を右手にのんびりと
この日は朝まで雨が降っていた。
道路に残る水たまりや、遠くの山の雲がそのことを教えてくれる。
走るうちに天気は回復し、気づけば空は冬の青さを取り戻していた。
応えるように光る海。
夏ほど眩しくないけど、眩しくないからずっと見ていられる。
それから、この辺りには船の工場が多い。
遠くの海を進む豆粒みたいなタンカーの中にも、瀬戸内生まれの子がいるのかもしれない。
松山市街に到着
日が暮れる前に松山市街に到着した。
市内を流していると、後ろから車ともバイクともつかない音が近づいてきた。
そうだった、と振り向きながら気づく。
松山は路面電車のある街だ。
普通の電車より少し小ぶりな車体が、渋滞で詰まった車の横をすいすいと進む。
あっという間に追い越され、ずいぶん離されたかと思うと、赤信号で再び追いつく。
こんな追いかけっこを繰り返すうちに、路面電車がだんだん可愛らしく見えてきた。
数十トンもある鉄の塊が、律儀に赤信号を守っている。
パステルカラーの軽自動車と鼻先を揃え、信号が青になるのを行儀よく待っている。
原色の塗装の路面電車。
曲線を生かしたフォルムの、真新しい車たち。
路面電車のある街は、今日に至るまでにその土地が経た色んな時代の成分が、うまく混ざり合って共存している。
日が暮れるまで散歩して、一日目は平和に幕を閉じた。
このときはまだ、次の日の過酷さを知る由もなかった。
2日目に続く。